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旅人には7つの行がある

 旅人は歩きながら学ぶ。
 旅人は学ぶだけではなく、道を求める。
 求道者は一生学び続ける。
 だから、旅人は行者だ。

 旅人は読む。石のように黙って、縁のある書をなんでも読む。そして、先哲の知識や知恵を、石のように積んでいく。旅人は、とにかく読むのが好きなんだ。

 旅人は聞く。水を求める渇いた心で、誰からでも何処ででも聞いて学ぶ。今、ここで何が起こっているのか、自分の考え方が正しいのか、耳と目で確かめる。旅人は、とにかく聞くのが好きなんだ。

 旅人は話す。風のような爽やかさで、ユーモラスに語り合う。お互いに自信のないことを検証し合う。旅人はディベートから逃げない。旅人は、とにかくコミュニケーションが好きなんだ。

 旅人は書く。火のような熱い思いで日記、あるいはノートに書く。マグマのような灼熱の思いつきが、冷えて固まる頃には、情報が知恵に変わっている。旅人が歩いたけもの道でも、書き残せば人の道になり、多くの旅人の道しるべになる。旅人は、とにかく書くのが好きなんだ。

 旅人は捨てる。「空」に憧れる旅人は、雲水か水母(くらげ)のように身軽だ。旅人は過去の実績を捨て、学び続けるため、ゼロから出発する。教えながらも学ぶ。教えた手柄は忘れ、学んだ恩は忘れない。旅人は、とにかく捨てるのが好きなんだ。

 旅人は攻める。天に昇る勢いで、旅人は何か、誰かに挑んでいる。自分の限界にも挑む。父親は、家や仲間を守るためになら死を恐れない。旅人は縄文杉のように、何千年も闘いながら、どっしりと構えている。旅人は、とにかく道を切り拓くことが好きなんだ。

 旅人は守る。地を這いながらも生き永らえようとする。子供を育み、育て、自立させるために、無償の愛を施す。旅人は、自殺なんかするんじゃないよ、みんな我慢しているんだから、と母親のように諭す。旅人は、縄文杉のように、何千年も子孫を残し続けている。旅人は、とにかく道を残すことが好きなんだ。

 1月15日、屋久島にある縄文杉(樹齢7000年以上)に会いに、朝4時に起き、登山する。トータル10時間、山道を歩き続け、足が棒のようになる。骨折、死亡事故が耐えない「行」だといわれている。黙々と歩きながら、「旅人」について再考した。

 
2007年1月15日
紘道館館長 松本道弘