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キューザスで飛び散ったアメリカ人たち

 沖縄の那覇は国際通りが人気スポット。
 12歳の息子と、レストラン『海底』へ入ろうとした。だが入口に、4〜5人のアメリカ兵がたむろしている。その時私は、「キューザス!」と声を荒立てた。全員がバッタのように飛びのいた。振り返った1人のアメリカ兵が、私の顔を見て、「ゴメンナサーイ」と日本語で謝った。
 「お父さん何て言ったの?」と息子が聞く。「キューザスと言っただけ」
 キューザス。この1秒英語があれほど斬れたとは。
 Excuse me. なら誰でもわかる。ところが、私には小学六年の息子がいる。だからmeでなく複数のus、息がもったいないから、もっと縮める。excuseのexを省く。seとusをリエゾンさせれば、キューザスと1秒で納まる。
 私はこのカタカナ英語を使ったまでである。ちょっと声が高かったから、相手は「どかんかい!ガキがおるんや」というぐらいの気迫を感じたのだろう。Please excuse us. では、あれほど派手に飛びのくことはなかっただろう。
 ソニーの井深大氏は3秒英語を広めた。その時に私を呼んだ。
 「西山千君を米大使館からソニーへ引っこ抜いたのは、ぼくのリスニングを伸ばすためだった。ところが、西山君は英語で苦労していないんだね。その点松本さんの本『速聴の英語』(プレジデント社)を読んでから、松本さんもリスニングで苦労されたことを知って本社へ来ていただいたのです。」
 たしかに、マーケティングに強い盛田氏とは違って、井深氏は技術肌で、3秒で英語が聴きとれる方法が技術的に可能か真剣に模索されていた。
 ところで私は武道家だ。斬れる英語を求めていた。師匠の西山千氏が、日系米人に囲まれて、いちゃもんをつけられた。その時、師は、「誰に頼まれた?(Says who?)」と答えた。それを聞いた日系米人たちは、師の1秒英語(セズフー)に恐れをなし、平身低頭、詫びたという。師の英語はめっちゃカッコ良かった。
 Way cool!

 
2007年2月11日
紘道館館長 松本道弘