畏友・木下義夫君が、田辺の市長選に出馬し、僅差で落選した。
私も応援したのに。……「のに」はやめよう。
当選したら、紘（弘）道館の支部を田辺に創り、熊楠は館長の私が甦らせると約束していただけに、残念だった。

しかし、私は諦めない。
生涯のライバルの南方熊楠に接近するために、また単身で田辺を訪れた。
その時、久しぶりに再会した木下君は（選挙疲れ故か）かなり老けていた。しかしこの男もしぶとい。後の市長選で応援し、当選させた現市長の真砂充敏という若きカリスマ議員を紹介してくれた。

それからこの若き市長（日本全国で２番目に若い市長）と私が急速に接近し始めた。呼吸が合った。世直しのカマキリ・ツアーの四人も、大変お世話になった。

私が第二の南方熊楠になれるか？　考えただけで武者震いがする。
この方が、師・西山千の恩に報いることができるのではないか。
青から緑の時代に遷った。

畏れながら、熊楠研究を再開する。
…… もし熊楠が、今生きていれば ……
ifから入るのが、ディベーターの意地である。

国際ディベート学会も、ディベート（知）に、交渉（行）を加え、知行合一を実践する磁場とした。陽明学の火がメラメラと燃え始めた。

…おれの闘志がまた燃える…
と村田英雄が歌う「王将」は、東京を意識した大阪の将棋名人のセリフだが、もうそんなちっぽけな意地は捨てた。

私の挑む相手は、来年の初日から南方熊楠に変る。世界が相手だ。
その戦略は、まだ考えていない。
擬態（カモフラージュ）か。
多分、変形菌戦略だろう。