『The Tipping Point』の著者Malcolm Gladwellなら、The Law of the Few(少数の法則)とThe Power of Context(空気の力=私訳)の章を引用しながら、こう言うだろう。
「少数の人が大衆酒場で<ディベーターを目指そうぜ>とハッパをかけあう身内のノリ(intimacy)が特異な空気を醸し出すのだ。これこそa transactive memory system(交流記憶システム)だ」
これはアリの交流だ。アリが三匹集まると、思考回路が同じになり、同時に同じことを考える(私はアリの専門家)。お互いが腹を割る(飲み屋や紘道館での直会)ことにより、stickiness(ベタベタした関係)が生まれる。ここでのすべてのhotな会話はヒートする。Cool!(スゲーッ)という感情表現が交わされる。
この種の広がりを持ったrelationship developmentが、the tipping pointとなり、ブレーク現象を起こす。ベストセラーはこんな空気(context)から生まれる。
京都で対談した安東伸元氏(狂言方能楽師)は、フランス革命を引き起こしたのは「笑い」だと述べられる。守りの能(泣き)に対し、攻めの狂言(笑い)が、権力に対するレジスタンスの空気(popular sentiment)と磁場を産んだ。
秩父事件がそうだ。農民が舞台劇を観ることにより、奮起し、それが引き金となったようなものである。伝統演劇は馬鹿にできない。空気をつくる。
磁力を内在しているからだ。
つづく |