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英語道 ―― 異種格闘技史 〜その4〜

「よく判らんが、なぜ君が私に…? 私の本も読まずに…」
「実は、あの時の先生の気迫に死相を感じたのです。この人は、命を賭けて、私の師匠に挑んでおられる。大阪からひょっこり単身飛び出してきたこの素浪人。タダ者じゃない…と」

淡々と語るその忍者、私は彼の英語を耳にしたことがない。
しかし、松下(今はパナソニック)のVHSがソニーのベータマックスを打ち破る番狂わせを、遥か昔に予期していたというインテリジェンス感覚には、ジャーナリスト以上の冴えがある。

かなりの英語の使い手でないと、予知能力にまで高まらないはずだ。
お互いの英語力などは、日本語の節々から推察することができる。

「どうして、松本亨博士の一番弟子が、英語教育の後継ぎにならず、単身でアメリカへ乗り込んでこられたのですか?」

「ある日、松本亨先生は一対一でぼくにこう仰いました。私の後継ぎになりたいという君の気持ちはありがたいが、君の力だけで一派を構えることができる。アメリカでも、一匹狼でもやっていける、と。自分のことよりも、弟子のことを考える師匠でした」

離れて益々強固になっていく絆。
これほど麗しい師弟関係など見たことも聞いたこともない。
この一番弟子が尊敬して止まぬ師の松本亨博士に、私は挑んだのだ。

英語で雌雄を決したい、という果し状を出したのである。
本来なら私は、X氏の仇相手である。

その5へつづく。

2008年1月25日
紘道館館長 松本道弘