革命家・孫文(孫逸仙)は、南方熊楠とは英語で会話をしていたが、別に熊楠の語学力や博識に惚れたのではない。
人間性(magnetic power)に惚れたのである。
当時、日本の政府は、孫文を危険人物として見ていた。
しかし、太っ腹な熊楠は、そんなことは意に介さずつきあった。
とくに両者とも西洋文化嫌いという点で意気投合しあっていた。
それだけではない。
『大博物学者』の著者、平野威馬雄によると、熊楠は孫文の革命を助けたという。
「いや、かくて、熊楠は孫文を救ったのだ。支那が今日あるのは、間接に言えば南方翁のお蔭とも言うことが出来るであろう。」(『大博物学者』(リブロポート)P.125)
だから孫文は、和歌山まで来たのである。
猫グスと呼ばれるほど猫好きな変人・熊楠には、こんな侠客的側面もあったというから、不思議だ。ますます惹かれる。
猫好きといっても半端じゃない。真冬でも真裸で、猫と寝る。
まるで炬燵代わり。猫と寝食を共にした。
食べものを口移ししたというから、猫可愛がりどころじゃない。
まるで愛人。負けた!
その熊楠は、語学の天才。私など足元にも及ばない。
その秘訣は、と聞くと、「酒」という。
語学に関しては、英語を中心にヨーロッパ言語をほとんどマスターし、ラテン語まで自由に駆使したというが、それも彼の生業(なりわい)の酔狂と遊読=iラテン語でいうludic reading)によるところが多い。
その3に続く。 |