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南方熊楠と語学道 〜 その3〜

図書室には、性科学に関するものが多い。
真言宗に近づけば、密教。
ロンドン時代の旧友であった、高野山の管長・土宜法龍とは、性に関する話題でも意気投合したのではないか。

「十住心論」で秘密曼荼羅(性)を説いた空海は、この点で最澄とは肌合いが悪かった。
南方熊楠が柳田国男とソリが合わなかったのも、熊楠の密教的な側面に原因があったのではないか。

私が英語教育界で浮き上がる遠因の一つは、英語学習に関する密教的側面であろう。
英語道と色道に関しては、ナニワ英語道ブログで書くが、あらゆる学問の秘教的側面は、覗いてはいけないだけに、覗きたくなるのではないだろうか。

ナニワ英語道とは、「(私が英語を話すのではなく)英語が私を話す(English speaks me.)」とか、「英語と性交できる(have sex with English)」、「惚れた女に英語を嫉妬させる」という域を目指す「道」そして「行」だと言えば、人は赤面するだろう。

少なくとも尊敬されない。

柳田国男が顔をそむけても、熊楠ならフンフンと頷いてくれそうな気がする。
英語を学ぶ近道とは、赤ん坊になることだと私は言う。
が、熊楠なら、酒を飲みながら、こう言うだろう。

「いや、アメーバーになることだ。二つが一つにならんが、アメーバー運動をしている粘菌の変形体は一つだ。同じようにアメーバー運動をしている数百個の細胞が、あっという間に一つの個体になってしまう。

それが粘菌だ。
粘菌のように外国語を学べば、だれでも、いつでも、どこでも、どんな言語でもマスターできる。言語、そして人間、それから周囲へ、ワシがどうして融け込んだか。ワシが粘菌になったからじゃ。
水木しげるなら、ワシを妖怪と呼ぶだろうが、それもそれでよい。
くだらんことでワシは腹を立てん。柳田のように…」

喧嘩っ早い論客・柳田国男がarguerだとすれば、南方熊楠は間違いなくdebaterだ。

その4に続く。

2008年2月8日
紘道館館長 松本道弘