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ドサ回り芸人の眼 〜 その3〜

ドサ回りという言葉がある。
これが佐渡回りの逆さ詞であると知ったのは、この島の研究を始めてからだ。NHKテレビにレギュラー出演をしていた頃の私の人気は、ピークであった。あれから25年。その間、私は舞台を求めてドサ回りをした。

浅草で舞台芸術を学び、芸の真髄に触れ、芸人の謙虚さを学び、いつの間にか私の芸域は広がった。しかし、ギャラは減り続けた。
NHKという晴れの舞台を失った、英語芸人の末路は哀れなものだ。もし中央へのカムバックを望む芸人に志があれば、ドサ回り(hit the road)に挑むより他はない。

世阿弥までここへ流された。私は流されたのではなく、ドサ回りを意識したのか、自ら流れついたのだが、この島には何かがある。Something magneticが。
世阿弥の芸風は、この島にも、いやこの島だからこそ残存している。

この島は「残す」島だ。
私の人生は捨てる人生だった。だから私のような流れ者でも受け容れてくれそうだ。
金山を失ってから、佐渡ヶ島の火は消え、経済は冷え、人口は減り、エネルギーは縮み続けている。今は7万人を切った。かつては金山奉行のあった相川地区だけでも10万を超えていたというのに。

 

その4につづく

2008年5月6日
紘道館館長 松本道弘