二十歳までロクに英語が話せなかった私が、バイカルチャリズムの道を歩もうという気になったのも、西山千という天才同時通訳者との出会いによるところが多い。師はネイティヴ以上のネイティヴといわれながら、両言語ともパーフェクトに活かされたから、帰国子女が話すバイリンガル英語とはほど遠い、エリート・バイカルチャリズムの道を歩んでおられた。
そんな名人についていくわけだから、中途半端な英語ではだめだ。日米両文化の懸け橋になる英語とはどんなものか。
ここで武器としての英語について触れてみたい。
英語は英単語から始まる。単語カードに書き込み、記憶していく。
これは、「点」の段階である。この点がセンテンスとして動き始めるには文法やロジックが要る。そして「線」になる。
言語学(リングイスティックス)といえども、聴き取れなければならないから、そこに音韻学(フォノロジー)が加わる。線の延長は異文化コミュニケーションだ。ネイティヴと英語で話しがしたい、ところがここで英語のシンボルが食い違ってくる。
snake oilと聞いて、蛇の油ではピンとこない。ああ日本でいうガマの油か。frog oilを使うより、英語ではスネーク・オイルの方が通じるのだ、という発見は、意味論(セマンティックス)の分野で扱われる。
これは、まだ平面を扱う二次元の世界。点と線は次元の数が一つであるから一次元。教室で学ぶ日本の英語教育は多分一次元止まりであろう。
通訳者や翻訳者が学ばねばならない意味論は、二次元に入る。だから、カエル油がヘビ油に変わったりすることがある。その意味(こころ)は、どちらもインチキ臭いだ。
その3につづく |