TIME誌と私とは腐れ縁。We’re stuck together.
いつ頃からだったか、毎週カバーツーカバー読破に挑んだのは。
多分、米大使館で同時通訳に挑んだ時期だから、30を越えた頃だ。
上司のウエノ・シローが、「毎週TIMEを隅から隅まで読んでいたら、同時通訳なんか簡単ですよ」と、何気なく口にした言葉。
ようし、と奮い立った。
思い立ったら、止められない。
13歳の頃から毎日、当用日記をつけているから、継続には自信がある。
辞める方が難しい。今では空気。存在が気にならない。理想的な女房。
お陰で、人より数倍の速さで日本語が書けるし、日本語並みに英語が読める。
TIMEがいつの間にか恋人になった。
毎週来るのが待ち遠しくなった。
「もう来たのか」から「まだ来ないのか」に変わっていく。
恋心とはこんなものか。
TIMEをポケットに入れて、人を待つ。
待ち人から待たされる ―― 平気。
待ち人からすっぽかされる ―― 平気。
TIMEという恋人があればそれでいい。
内容がおもしろければ、相手が遅れて来てもいい。来なくてもいい。
―― その方がいい場合だってある。
今週のTIMEの特集はマンデラのリーダーシップについてだ。
リーダーシップの8つの条件。
勇気。前線に立て。手柄は部下に。敵情を知れ。味方は近くに、敵はもっと近くに。
(ん、まるでアメリカが学ぼうとしている孫子の兵法)
そのあとは、外見は大切(微笑みは忘れるな)。世の中は黒か白ではなない。これで7つ。
最後は何だろう。
Quitting is leading too. (辞めるのも、リーダーシップ)。
ここでウーンと唸った。こんな簡単な英語で、意味は深遠。
禅譲せよ、という。つまり潔く後輩に道を譲れ、と。
こんな簡単な英語表現か。うーん。
同時通訳の名人・西山千も、そんな潔いところがあったなあ。
暫く独りになって、故人と語りたい。待ち人が来なくてもいい。 |