もう十数年前になろうか。法務省の有志十数名の人たちに英会話の臨時講師を頼まれたことがある。広がりつつある国際犯罪に対処するにはICPO(国際警察)をはじめ、世界的連携が必要であり、どうしても国際語としての英語が必要だからとの趣旨であった。
英語の基礎は、呼吸法とロジックであるとし、受講者にも発音と発声を求めたが、職業柄か警戒心が強く、無反応。じーっと私を見ている。やりにくい。まるで私が被疑者のような錯覚にとらわれた。
そこで思い出したのが、宮本武蔵先生の「陰を動かす」という妙技だ。以前このブログで触れた、B型の教授(コネチカット大学)にかけた奇襲攻撃のことを覚えておられるだろうか。
「今、ちょっと英語の授業をストップし、皆さんの血液型を問いたい。気質というものは英語学習法と無関係ではありません。日本人の血液型は、A、O、B、ABと4、3、2、1の割合になっていますが、皆さんは、A型が80%以上だと敢えて断言をします」
私はA型だが、時にはB型人間になりリスクをとる。
そこから、一人ひとり自己紹介が始まった。なんとたしか13人のうち10名がA型で3人ぐらいがO型で、あとはいなかった。
警察官たちの眼が輝いた。どうして判ったのか、と問う。陰を動かすことができた。(武蔵先生ありがとう)
「それはですね、A型は農耕民族的な気質で、周囲の眼を気にするのです。恥をかくのを恐れ、人の前で英語を話すのを恐れます。英会話は、B型に勝てないでしょう。しかし、マラソン選手のように長距離レースとなると、A型の独断場になります。それにアルコールが回ると、Aはよくしゃべります。英語でも同じです。まず、日記を英語で書きましょう。自分自身に、英語で語りかけるように肩の力を抜いて書きます。外に向かって話しかけるのはその後です…。間違った英語を聞かせて恥をかくことを恐れるみなさんは、弱虫じゃなく完璧主義者なのです」
このようにA型人間を動かすには、発言に気を配る。
「で、どうしてB型は一人もいないのでしょうか」と尋ねたA型がいた。―― 二次会でアルコールが回っていた席上だったと記憶している。アルコールは空気を変える。
「それはですね、A型は和を乱した人をひっとらえるのが好きで、Bはそのルールから逃げ出すのが好きだからです」
Aを殺すのに刃物は要らぬ。空気を武器にすればいい。
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