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O型はL語の世界 〜 その6〜

ある日、山手線の満員電車の中へ、一人のOLふうの女性が飛び込んできた。
「あのう、松本先生ですか」(ぜいぜいと息が乱れている)
「そうです」…… それから沈黙。べつに要件はなかった。相手は顔を赤らめていた(私の髪の毛が黒かった頃)。

ぎゅうぎゅう詰めの車中で二人は黙ったまま。べったりくっついたまま。
話題がなく、間がもてず、一つだけ質問をした。
「失礼ですが、O型ですか」「そうです」。また話題が途切れた。

O型は、直接飛び込むタイプ。A型好みの間接コミュニケーションは好まない。
一発で当てるのは、まぐれに近い。今までも初対面の人から「私は何型」と聞かれると一番困る。患者が医者に、私の病状は何でしょうと聞くような不躾な質問だからだ。

血液型気質論のパイオニアであった能見正比古氏も、初対面は外れるという。しかし、10分も話をすれば80%、1時間話せば90%と適中率は高まる。血液型の本を書いていた頃は、90%以上当ったものだ。受け取った名刺の裏には、血液型を書き込み、イメージしながらつきあった。それが意外に役に立つ。

名刺の電話番号にかけて、つかまる確率はBの場合は、極めて低い。はやり遊牧民族か…。もっとも、私の予想が外れることもある。ある日、電車内で椅子に座っていた。一人の若い女性がサインをしてくださいと話しかけてきた。

まず一言、「きみはO型だろう」と自信有り気に聞いた。「いいえ、A型です」という。「まさか、A型が初対面の人に話しかけることはないはずだが」というと、「…実は、頼まれたんです」「だれに」「あの人です」。彼女が指をさした対面の座席に、一人の恥ずかしそうな顔をした男性が座っていた。私が目を向けると、相手も横目で私の方を見ていた。

二人ともA型であった。Aは独りでは動かないが、だれかに頼まれるとノウといえない気質だということを知った。もしこの女性がO型であれば、間違いなく「自分で行きなさいよ」と言うだろう。そうすればきっとA型男性の方は行動に出ないだろう。

血液型の研究を始めると、相性(chemistry)と互換性(compatibility)にまで思いを寄せるようになった。相談もよく受けるようになった。ディベートなんかやめて、血液型人生相談所でも開こうかとジョークを飛ばしたことがある。だから、あんたB型だろうといわれるのだろう。

2008年11月7日
紘道館館長 松本道弘