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論道とソクラテス対話のすすめ 〜その5〜

この空気に逆らう勇気は、師匠のソクラテスから賜った。Know thyself. もう一人のメンターであるインドのクリシュナムルチも同じことを説かれる。ディベートの本質に迫るプロは、<道>という語尾をつけずとも、実践している。

真実というものは、勝敗を超越したところにある。だから古今東西、人はソクラテスに磁石のように吸い込まれていくのだ。ベンジャミン・フランクリンは、イエス・キリストとソクラテスに学びたまえ、といった。偉大な師匠というものは、特定の人間が独占できるような存在ではない。

ソクラテスは哲学入門の第一歩は、自己を知ることだ。その第一歩はWhyだ。ICEEの第一歩もWhyだ。インターネットの時代になると、家に閉じこもり、人と交わろうとしない人が増えてくる。そういう世間の空気に流され、ICEE参加者も減り続けている。

「お祭りだ」と、いくら言っても、スコアが気になる人は、勝敗や上下関係が気になるようだ。地検、水検のwhy-because gameは、最高の思考訓練になるはずだ。Play the whys?(ホワイ思考で挑め)というCharles Case (cognitive anthropologist)は、私と同じようなホワイ・ゲームを開発されている。その狙いは、self-creative(自己創造的)にあるという。

たとえば、Was Socrates alone? と聞く。諸君はYesと答えられるに決まっている。その時、メンターは敢えて、Noと答えてみる。スマッシュだ。すると相手は、Why? と聞き返す。そのように誘い込むのだ。

そしてこんなふうに決まる。Because he was by himself. 書き言葉では、このbyはイタリック体になる。by oneselfは、独りぼっちだが、自分という他人のそば(by)にいるから1人ではない、ということになる。

その6につづく

 

2008年12月23日
紘道館館長 松本道弘