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論道とソクラテス対話のすすめ 〜その6〜

私は独り旅行(travelling by myself)が好きだ。
世界を股にかけて飛び回ったが、レストランでも機内でも、どこでも独りっきりだ。考え事、時にはself-debateをするのが愉しい。つまり、いつもby myself。独りだが、2人いる。だから、私の辞書には孤独はない。

セルフ・ディベートの悦びを知らない人は、退屈で孤独だろうな、せめて日記でも書けばいいのに、と気の毒に思う。
時には、月夜の晩にワインを飲みながら、プラントンと対話をする。そしてその日の夜か、翌朝に、プラトンと私の対話を英語で書く。

自らがmagnetになれば、仲間はいらない。赤ワインを手に英文を書く。
ICEEにはない酔検≠セ。孤独を感じる人は、その人がbatteryだからだ。
切れることを恐れる。Lonelinessを恐れる人は、バッテリー。

孤独を恐れず、求める人は、マグネット。強力なマグネット人間は、強大な問題意識のネットがあり、必ずソクラテスに惹かれていく。ソクラテス道(Socrates’ Way)を書いた。Ronal Grossもソクラテスという巨大な蜘蛛の網にかかった、磁石的人間だ。この会ったこともない著者とブログで架空対談をしてみたい。渡米費用がなくても、ヴァーチャル・ダイアログはできる。

ソクラテスは考える人。だからa careful, slow thinkerだ。ディベートの準備のときに、ひとり悦に入って、ペラペラ喋るタイプではない。自分自身に対しても常に不満を持っている。だから向上心がある。知れば知るほど、自分が無知であることを悟る。ゼロ思考。

まさに<道>である。哲学者ジョン・スチュアート・ミルは言った。
“It is better to be a human dissatisfied than a pig satisfied.”
更にミルはこう加えた。
“It’s better to be Socrates dissatisfied than a fool satisfied.”

人を論破して勝ったと悦に入っているディベーターに聞かせたい。私は最近こんな言葉を使った。1500名近くの中高の英語講師たちが集まった九州全英連大会の席上でだ。
満腹の羊より、空腹の狼になれ! と。

本物の英語に飢えている先生方向けのpep talkだから、多少のスパイスを利かせたまでだ。その背景にあったのもソクラテスのspiritだ。
―― 肥った豚よりも、痩せたソクラテス ――

 

2008年12月26日
紘道館館長 松本道弘