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女の時代 〜 その1

思考を遊ばせる ―― 遊考。
バスから富士山を眺めていると、思考が翔ぶ。
カゴの中の鳥は、カゴの外の鳥を羨ましがる。自由でいいなあ、と。

カゴの外の鳥は、カゴの鳥に憧れる。いいなあ、リスクのない社会。いつも決まった時間に餌を運んでもらえるなんて、こんな厳しいご時世に。
カゴの鳥が反論する。

「そんなに甘くないよ。このリストラの時代、わたしだって、いつカゴから追い出されるかもよ。だから、手に職がないと困るときがくる。いつもビクビクしているんだ。」
このカゴが、家庭であったり、職場であったり、組合であったりする。

家庭や会社は、身を守ってくれるカゴであった。ところが、今の日本、そんな安全弁が外されていくような気がする。この不況の時代、夫にとり、妻にとり、身を守ってくれるはずのカゴが消えていくのだ。そんな不安が重なると、家庭内がギクシャクする。

不況になり、クビを切られるのは、男が先。
急に死を選ぼうとするのも、男が先。

ところが今は女の時代。女が強くなったのか、男が弱くなったのか。
カゴのない時代、安全弁なき時代。仕事など選べない時代。
どんな仕事でも欲しい時代。学歴が通用しなくなっていく時代。

だからすぐにでもオマンマが食べられる技術(スキル)が必要なのだ。
ちょっとした通訳・翻訳技術があれば、少しは将来の食いぶちに繋がる。カゴ(戸籍)にあぐらをかくことなど許されなくなった。

英語によるディベート・交渉力、通訳技術を身につけていれば、なんとか、やっていけるのではという人が私の近くに増えてきた。とくに女性の方がハングリーだ。TOEICといってもバカにはできない。資格やスコアが欲しいのだ。

何かすがるもの(something to hang on to)が欲しい。
気休め(emotional crutch=心の杖)であってもいい。

最近、『名人西山千(仮)』を書きながら、調査のために、通訳関係の人たちにコネをつけ始めた。出版社の意向で、最近の業界模索を加えることにした。
米大使館での同時通訳修行時代ではネタが古過ぎるというから、リサーチを再開しなければならない。

 

2009年1月16日
紘道館館長 松本道弘