一生英語とディベートで食っていけるはずだと盲信している人は、途中からディベートを始めた人を低く見る。オレのディベート歴の方が上だ、という驕りがどこかにある。こういう人は、あまり説得力がない。ディベート好きにディベート教育をさせることは、酒飲みに、酒を売らせるようなものだ。そういうディベート狂いの若者に、こんな忠告をしたことがある。
「君ねえ、学生時代からずーっとディベートをして、アメリカでも英語のディベートをやってきた功績は認めるよ。でもね、君が教えたがっている生徒の多くは、君と全く別の道を歩いてきた人ばかりだよ。相手は英語ができない英語アレルギー、そしてディベートの基礎も知らない人を見下してはいけない。自分をゼロにして、生徒からも学ぼうという気持ちがないと」と。
その人物、「ぼくは頭を下げることはできません。ずっとディベートの道一本で指導者になってやっていきます」といって、私から去った。今じゃ一流大学の教授。肩書きも華々しい。彼の発想はこうだ。アキレスはいかに速く走れても、一歩先に出たカメを追い越すことはできない。
しかし、実際は抜ける。いくら人より多く、一つの道に徹していても、全く別の分野から登場した人間に追い越されることがある。これが幹細胞思考だ。
英語の道一筋。聞こえはいい。それは英語術だ。英語道とは正反対の生き方をしている。朝から晩まで英語をやっている自己陶酔型の人間がいる。そういう人がかかりやすいのがガン細胞だ。ガンに侵され、いつの間にか自分がガン細胞になってしまう。青く燃え始める。
「だいたい、ディベートとか、英語に「道」というのをくっつけるのは馬鹿げている。ディベートも英語も技術(スキル)以上のものではないのに」と。そういう独善的な人間も受け入れるのが幹細胞(ミチ)なのだ。
そういう英語道の私も、疲労やストレスが重なると免疫性を失うことがある。
長時間のバスの中での読書で目が疲れる。睡眠不足(1日4時間ではつらくなる)。加齢(70歳近くなった)。
不摂生が重なると、免疫力が低下し、風邪にかかりやすくなる。秋田へ行く前に風邪でダウンした。数年ぶりだ。その時電車の中で雪景色を見ながら、再起の方法を考えた。いかに免疫力をアップするか。加齢を減滅する方法は。Grow younger.
この道の精神は、20代の前半から主張し続けてきた。幹細胞の活性化だ。そして摂生する。自然治癒。風邪薬とアルコールを飲んで、記者会見はしない。
これは中川大臣の話か――。
そう、英語道とは、自然に備わった免疫性のことだ。幹細胞とは何か、もう一度ここで振り返ってみよう。幹細胞は、生涯にわたって分裂できる。幹細胞(ミチ)は、ガン細胞と同じく受精卵が分裂して生まれたcompetitive cellsでありながら、幹細胞は他の細胞に分化できるのだ。
だから、柔道、英語道、ディベート道(論道)、通訳道、教育道と、分裂しているようで、幹細胞(ミチ)からは離れていない。英語、そしてディベートしか関心のない人物は、他の世界を知らないから、ガンに侵されやすい。もう二度と、大学教授はいやだと決めた私が、再び国際教養大学の客員教授を引き受けたのも、幹細胞による意思決定だ。
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