かつて東京で行われたICEEで、オレは負けていない、と外人ジャッジに噛みついた不粋な男が一人いた。
ところが今回、一位、二位となった武道家上がりの英語サムライは堂々としていた。大会後の直会(なおらい)の参加者は30名近くに膨らんだので、参加者(受験者というより)のほとんどがこの夕食に加わったことになる。
自分は次のゲイトに進出できなかったからそのまま帰るというコンテスタントはいなかった。これがICEEの特長である。最後まで残る。これがICEEが「お祭り」として成功した証拠になる。
ICEEには、悪平等はない。そして悪不平等もない。参加者が全員winnersなのだから。その様子を見て、一番嬉しかったのが裏方で汗を流した十数名のシャドウ・サムライたちだろう。彼らもwinnersなのだから。
居合抜きや、英語落語の余興も「祭り」の効果を高めた。慰労会は盛り上がる。その席上に、モモとカズを呼びつけた。「今から説教をする」と。
私がよく口にする「残心」だ。
「カズ、お前は、ディベートで質問できなかった。モモの協力がなかったら、あそこで敗退していた」(浜岡氏も同意)
「ぼくもそう思います。本当の勝利者はモモタロウです」と。
武道家らしい。映画『スピリット』を思い出した。
「モモ、お前のエネルギーは英語と共に落ちている。京都でボケたのか。たるんどる。3歳のときに、テレビでウィッキーさんに抱きつかれたな。自然にWhy? と聞いて相手を感動させた。あのときの感動がなくなっている。初心に戻れ」
タクシーのドアのところまでカバン持ちをしてくれたモモがボソッという。
「やはり、カズさんは、チャンピオンの風格があります」と、裏で誉めたたえていた。
その6につづく |