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「おい」と「おーいー」の間 〜 その2〜

「おいおいおい、それはねーだろう」という否定語は、英語では、Whoa, whoa, whoaという。馬を止める時などにこのウォウウォウウォウと言うが、日常会話でも使われる。Hold it. 「止めろ」に近い。

この「おう」という二重母音には、いったん外へ出ても、内へ引き込もうとする求心力を感じてしまう。その意味でhomeとは、パワーのある名詞だ。

「どこへ行くんだい」と言われると、帰途にあるあなたは、「今、家へ帰るところなんだ」と5秒ぐらいかけて答えるだろう。英語では1/2秒ですむ ―― Home.と。

私は逃げない、いつ戻ってきてもここにいるわよ ―― I’m home to you.
私の亡き母はいつも家にいた。いつ帰っても、長屋の一軒家で飛び去った子供たちが帰るのを待っていた。岡町(豊中市)は、松本家にとり巡礼地のメッカであった ―― 母が亡くなるまでは。

サンフランシスコのある町はホモ(gays)のメッカだという意味で、Meccaをそのまま英文として使ったときに、イスラム人たちは怒った。メッカは聖都なんだ、と。代わりにa magnet for 〜を使えばよい。私は、そんなとき内容をトーンダウンして、be home to gaysという低エントロピー表現(ふるさと言語)を用いる。

映画『E.T.』の中で、「家に電話をかける」という表現があった。phone home(フォウン オウム)は、斬れる表現だ。家は永く住めば住むほど、離れられなくなる。a magnetになる。
2009年8月14日
紘道館館長 松本道弘