devil’s advocate(悪魔の弁護士)のdevilは、demonと同じく悪魔であっても、毒性は低い。だから、「これは老婆心から申し上げているのですよ」(I’m just trying to play the devil’s advocate with you.)のように、軽いのだ。
『日米口語辞典』には、取り上げられなかったが、ここで「天の邪鬼」の解説を加えておきたい。
天の邪鬼とは、仏像で、毘沙門天や仁王の足下に踏みつけられている小鬼のこと。悪い奴だがあまり憎めない。しかし昔話では、悪者として登場する鬼であることに変わりはない。
瓜子(うりこ)姫に退治される話が知られている。これは広辞苑の解説だが、大辞泉では、第一義に「わざと人に逆らう言動をする人。つむじまがり。ひねくれ者」を挙げている。そして今日、使われているのはこちらの方だ。よく私が耳にする英語表現では、contrary person, negative person, naysayerがあげられる。
ある和英辞書にある、perverseやcross-grainedというのは、あまりにも病的だ。オバマ大統領は、cynics(冷笑者)という言葉を好んで使われる。それでもdevilの域を出ないから、まだ軽い。シニカル(冷笑的)人間は、チクチクと反論はしても、ネクラ人間のつっぱりに過ぎず、ボディーブローにいたらないので、致命的にはならない。 |