どうも私はウ音にこだわる。ウというパワーを失えば国力が落ちるのではないか、という憂いがあるからだ。かつては、行くを「ゆく」と呼んだ時代(平安)があったが、いつの間にか「いく」と発音されるようになった。
腹から発声する母音ではないから、どこか軽い。だからアメリカ合衆国の「合」がユナイテッドとカタカナ風に発音されてしまう。正しくはユウナイテッドである。この発音を強調しながら統一(ユニティー)を訴えて、当選したのがオバマであった。彼の勝因はユウだ。For YOU. Yes, YOU can. と「ユウ」に力が込められていた。
黒人の発声は、原始的な腹(白人は胸で、日本人はノド)からの声になる。前述したオバマ好みのoomphも、腹からしか発声できないウーンフだ。日本言霊学の大家中島玉雄氏によると、「ウ」の音は、「動き、働く霊だ」と述べる。
あくまでも「自分が中心」で、動き、働くのだ。自らが動き、ハタをラクにする(ハタラク)は、神道的発想である。一神教にはこの思想はない。ウの音に、「歌」「謡い」があるように、日本は古来からウタの好きな国であった。和歌は和え歌(こたえうた)として発生した。
未婚の男女が一堂に会して、『謌歌会(カガエ)』という宴遊びを行い、歌で相手の心を確かめ合った。多くは男が呼び掛け歌う。女も歌で答える。負けると男に従うという遊びだ。これは、ディベート・交渉の原点ともいえるゲームではないか。
中島玉雄は、歌は「心に写った」ままを詠じるように、「ウ」の音も「心」に感じたまま行動をする、と述べる。
そこには哲学は要らない。しかし、結果としてうまくいく―― It works. そうこのwork(機能する)か否かというのがプラグマチズムの原点なのだ。work(動く、働く)は、Wで始まる。
ユーが二つでダブル・ユーなのだから、ウはwork well(うまく機能する)なのだ。そしてworkは腹から声を出す動詞だ。oofに近い。oof(ウーフ)は、日本語でいえば、うーっ、うっ、おっ(驚き、喜び、苦痛、不快などの発声)という声に近い。oops(おっと失言)に近い。うかつに、いや自然に出てくる音だ。
その2につづく |