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蛹の期間 〜 その1〜

考えるところがあって、紘道館の館長ブログを、暫しの間閉鎖する。蛹になる。私の人生の節目で、よくこういう心境変化が突如起こる。
急に蒸発したくなる衝動も、私が完全変態タイプのロマンチスト(risk taker)だからなのか。私のような常軌を逸した変人ばかりが世の中ではびこっても困る。

とはいうものの、どんな人間でも変態(メタモフォーズ)だけでもして欲しい。
自分の殻をどこかで破って欲しい。
脱皮して欲しい。脱皮のできない人、蛹の期間を避ける不完全変態タイプは、どこかで不完全燃焼をするものだ。

「オレは大学を出ていないから」とか、「高校出だけど、大学出のあんなやつらに負けない」と、何らかの形で高学歴の人間を「いちびる」人が多い。そういう人は学歴コンプレックスの人に実に多い、アクの強い人たちだ。高学歴になればなるほど、アクが抜ける。人を見下さなくなる。中には高学歴を鼻にかける鼻もちならない人もいるが。

オバマ米大統領の母が、息子のバラクに、「大学は自分の暗い過去から解放してくれるのよ」と説得した。経済的な理由で大学へ行けなかった人の怨念はどこかでくすぶり続けるものだ。それが過剰反応を招く。

これを心理学ではovercompensationという。
コンペンセイトとは、「埋合わせ」「相殺」という意味だが、生物学では、「代償作用」という。他の器官の損失や機能不全を補う、器官の一部の大きさや活動の増加のことだ。
逆に心理学では、身体的、精神的な欠陥を別の行動をとることによって補おうとする心理的な働きだ。

鬼才・松本清張は生涯学歴コンプレックスを引きずった人物であったが、それをバネとして大成した推理小説家だからたのもしい。随分、つらいが、逆ギレもせず、耐えがたき蛹期間を送ってこられたこの種の天才は枚挙にいとまがない。

宮本武蔵を書いた吉川英治も、池波正太郎も、自己の内部で青く燃え続けたovercompensationと闘った人たちだ。しかし、それらの鬼才も、どこかで蛹の期間を過ごしたはずだ。このブログを愛読して下さった人たちでも、きっと蛹のモラトリアム期間があったはずだ。紘道館へ来る人は、そんな人が多い。

その2につづく




2009年9月25日
紘道館館長 松本道弘