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グーグル・ビデオによるオバマの正体
オバマは、悩み多きイエス・キリスト

 オバマのフェイス・ブックによると、彼はキリスト教の信者である。どうもそのようには思えないのだ。遠藤周作によると、自分にとりキリスト教とは、背広のようなもので、時と場合により取り換えのできる衣類のようなものらしい。決して刺青(いれずみ)のように、すことのできない厄介なものではない。事実、遠藤周作の作品を読んでいると、本人はクリスチャンじゃなく、仏教徒のように思えてならない。
 オバマも、キリスト教のスーツを召しながら、肉体の一部にイスラム教の刺青をしているような感じがする。英語で言う wolf in sheep’s clothing(羊の皮をかぶった狼)という表現は、適切ではないかもしれないが、オバマ研究が進めば進むほど、キリスト教は、彼にとり一張羅の背広のように思えてくる。
 ところで、ホテル缶詰執筆とは便利なもので、邪魔がないだけに仕事に没頭でき、オバマに感情移入しやすい。この時間も、テレビのCNNニュースとFOXインターネット・ニュースを同時にかけっぱなしで、執筆をつづけているが、オバマに対する批判が徐々に高まりつつあるようだ。

  1. オバマが支持している幹細胞研究に関し、カトリック教会から反論が噴き出してきている。中絶賛成派(プロチョイス)のオバマにとり、妥協を許さないプロ・ライフ(生命重視)の宗教組織の不支持は痛いところだ。
  2. サウジの王に、頭を下げた、ということで、共和党から火の手が上がった。bow(おじぎ)ではなく、自分は背が高いからlean over(かがんで)して、握手をしたのだと自己弁護したものの、どうもぎこちがない。当然の外交辞令じゃないかと開き直ることができなかったのか。
  3. 「あなたはイスラム信者か。」と問われるたびに、My grandfather was.(祖父はね。)と答えており、イエスともノウとも答えていないが、『Dreams from My Father』を読み進むと、心情的にはアフリカ(ケニア)の価値観に近い、イスラム教に傾斜しつつあることがわかる。イエスという言葉がなく、straight to God(神一直線)という言葉を使っている。空海が、大日如来と直接に交信するといったように、むしろオバマは、本来スピリチュアルな傾向が強いので、ますます密教的な色彩が濃厚になっていく。
  4. アメリカでイスラム人化が進んでいる。イスラムのシャリーア(イスラム教徒の宗教的・世俗的生活を規制する習慣)という法が見直されている。
  5. グーグル・ビデオ番組には、ちとやばい陰謀系の特集が組まれている。キリスト教(モルモン教が特に力強い)のイエス観に対して、イスラム教がザ・ディーン・ショウ(ボスとはエディー)で激しい攻撃を続けている。 
    「イエス・キリストは神なんかじゃない」と。
    神は、産まれない。(人間じゃないんだから。)
    イエスは、「自分は神だ」とは言っていない。(信者が勝手に盛り上げている。)
    イエスは、神を目撃したわけではない。(人々がイエスを見ただけ。)
    神ですら不可解な「三位一体(トリニティ)」の意味が、イエスにわかるわけがない。
    トリニティとは。父なる神、神の息子、聖霊が一人の人格だって?神のみぞ知る難問だ。
    イエスは、食って、寝て、飲んだ。(まるで人間そのもの。神ではない。)
     
 イエスが神の息子(サン・オブ・ゴッド)であれば、一人ではないはずだ。神の創造物(クリエーション)の一つに過ぎない。
 英語でいうlord(s)は何人いてもいいのではないか。出自の不明瞭な人間を神に祀り上げることは、神の意志ではないだろう。神はお気に入りの一人だけに神意を代表させるという排他的(エクスクルーシブ)な肩書を与えるはずがない。
 マリアは、最高の女性であることは認めるが、なぜ処女のまま産んだ息子のイエスを救世主(クライスト)に選んだのか―そんな権利が一人のただの女性に与えられてもいいものか。
 イエスは、いけにえの羊(sacrificial lamb)として世に送られたというが、神のクローン人間を創ることは、自然の法則に反するのではないか。創造主自らが、そんなルールを破るはずはない。
 イエスは、十字架の上で亡くなった。人間だから当たり前のこと。しかし、神は死なない。
神こそが、信仰の対象になるべきなのに、なぜ息子まで崇めなくてはならないのか。ユダヤ教のままでいいではないか。
 こんな冒涜(ぼうとく)的な説法を、一時間にわたって、英語で全世界に向かって、発信されているのだ。時代は変わってきた。
 キリスト教信者であるオバマは、どのように反論するというのだろうか――自己矛盾に陥ることなく。
 今、オバマの心は水のように揺れている。
 水はH2(水素)とO(酸素)が化学的結合している。水と油のように、物理的に結合しているわけではない。どこまでがHで、どこまでがOか、わからない。それが、心の境界が定かでないオバマの気性だ。
 ハムレットのように、心はいつも揺れ動いている。
 彼が書いた本の中にはdilemmaという英語がひっきりなしに登場する。
 
2009年11月2日
紘道館館長 松本道弘